ある日突然、子どもが学校に行きたくないと言い出した。
いち早く原因を突き止めたくなりますよね。
どうしたら子どもの気持ちが切り替わるだろう?
あっさり登校してくれる日は来るのだろうか?・・など、果てしなく長いトンネルの中にいるような気持ちだと思います。
私の息子は小学3年生の時に突然学校に行けなくなりました。
それまでは友だちも多く、楽しく学校生活を送っていると思っていたため、まさに青天の霹靂でした。
家庭では夫は単身赴任中、私も時短勤務の仕事をしていましたが、育児と仕事の両立は出来ているつもりでした。
しかし朝になると、しおれた風船のように動かなくなり、時には暴れ、心を閉ざしてしまった息子を見て、途方に暮れました。
そんな息子も今では、家族の中で一番に家を出て元気に登校するようになったのです。
私と同じ悩みを抱える親御さんのために、私たちが歩んだ体験が不登校克服へのキッカケとなればと思います。
目次
1.克服までの道のり ~どんな過程を経て、学校に行けるようになった?
1-1.4つのステップを踏む
不登校の子どもが立ち直っていくまでに、混乱期・安定期・転換期・回復期と4つの段階があります。
第1ステップ:混乱期
子どもも親もパニック状態です。
子どもは暴れたり、無理難題を言ってくるといった傾向があります。
この時期は子どもに相当な負荷(ストレス)がかかっています。
そのストレスとは、友達、先生、授業の内容だったり、夫婦関係などの家庭内不和が原因であったりもします。
または将来へのばく然とした不安や、親にもっとかまってもらいたい、もしくは逆に親の考えを押し付けられている場合にも起こります。
「○○がイヤだ!」と暴れたり、「○○したくない」とお母さんを困らせたり、対応にとまどってしまいますよね。
けれども、これはどんな子どもでも起こりうることなのです。
こういった子どもの言動の裏には、自分を全面的に受け入れてほしいという要求のサインが隠れているのです。
それではどうしたらいいでしょうか?
無理な要求でも徹底的にきいてみましょう。
まず子どもがどんなストレスを受けているのか、検討がつかない時は、言動に表れてくる事もあります。
それは外の世界に対しての不安だったり、様々です。
分からないときは深入りせず、子どもを受け入れつづけることが大切です。
我が家の場合:
学校に行きたくない理由が全く分かりませんでした。
親が仕事に忙しかったため、愛情不足だと勝手に決めつけてしまっていました。
その結果、何が原因なのか親子共々分からないという状態が悶々と続きました。
この時ちゃんと子どもの心の声を聴いておくべきだったと思います。
第2ステップ:安定期
子どもが一旦落ち着く時期です。
親が学校に行かせなくなったことで抵抗する必要がなくなったためです。
部屋に閉じこもったり、近所をさんぽすることはできたり、友だちと話すことはできるが、学校へは行けないという事もよくあります。
ここであせらず、親子で仲良くなることを心がけましょう。
登校を促したり対応を誤ってしまうと、混乱期に逆戻りしてしまいます。
我が家の場合:
この時期は子どもは非常に安定し、好きな事をしている時はハツラツとしていました。
機嫌がいいので、ちょっと学校のこと話してみようかな・・と話を切り出すと、黙ってしまったり、「うん。明日から登校する」と言えた時もありましたが、翌朝には逆戻り・・のくり返しでした。
第3ステップ:転換期
外出をしたがったり、学校に行ってみたいと言い出す事があります。
なかの良い友人と久しぶりに交流した、不登校経験者や家庭教師と出会ったり、あこがれる芸能人やスポーツ選手のイベントに参加してみるなど。
今なら直接会わなくても、不登校経験者の方のブログを読んだり、オンラインで不登校を支援する団体のカウンセリングを受けてみるなど、様々な方法で新しい人との出会いによって変化を生むことができます。
または、フリースクールに通ってみた、病院でカウンセリングを受けた、など環境の変化を起こすことで、子供の考え方にグッと転換が生まれる時期です。
長いあいだ一定の人だけとしか交流がない状態は心身によくありません。
なるべく外部の人と交流したり別の環境に身をおいてみる事が次の回復期に向けてのステップになります。
我が家の場合:
夫の転勤辞令があり、遠くに引越すことになりました。
もちろん子どもも新しい小学校です。
しかし環境の変化だけでは不登校は改善しませんでした。
なぜなら子どものばく然とした「不安」が全く解消されていなかったからです。
第4ステップ:回復期
今まで不安だった子どもに自信が芽ばえると、みずから目標や楽しみを見つけて行動を起こしていきます。
すこしずつに自信がついていき、「今日はここまでできた」をくり返す事で回復に向かっていきます。
親が何か「してあげる」よりも、子どもが今「やりたい」と思っている事をサポートしてあげてください。
子どもの考えを受け入れた上で、危ないな・やってはいけないなという事があれば「お母さんだったらこう思うよ」と提案してみてはどうでしょうか。
「ああそういう考えもあったのか」と子どもが自分で気づいてくれたら、最高です。
そして、お父さんお母さんは「子どものために」何かするのではなく、「自分のために」たくさん楽しむことを心がけてみてください。
子どもはもう子ども自身が望む事を、自分だけでやっていく力をつけています。
親がどんなに「子どものために」努力したところで、子どもが自分でやりたい!と思わなければ、それは押し付けになってしまいます。
我が家の場合:
「昨日より(登校時の)歩くペースが少し上がってきたね」とか、何でもよいので、できたことを一つ褒めるように心がけました。
子どもが「明日は2時間目から教室に行ってみる」と言ってくれた時は「いいねえ!てことは2時間目は体育かな?」と楽しみを一緒に分かち合うようにしていました。
心の中では(でも行けないかもしれない)と思いは常にありましたが、結果は気にしないようにしました。
校門で立ち止まり、ピクリとも動かなくなってしまった時、自分ではもうほめる言葉が見つからなくなってしまい、困り果てた時は先生に助けを求めました。
保健室ならどう?と先生が提案して下さり、しばらく保健室で自習する日が続きました。
自習の内容は本人の好きな算数と決まっていましたが、先生も本人の意思を尊重してくれました。
次第に気の合う友だちもできてくると、朝の息子の顔つきがぐっと明るくなってくるのが分かりました。
2.克服するキッカケは、何が一番良かった?
人によって最善策は異なりますが、共通して大切なのは
・受け入れる(命令・指示しない)
・人間関係と環境の変化
そして一番大事なのは、
・親が自分の人生を楽しむこと
です。
2-1.まず<受け入れる>
学校に行けない「子ども自身」を受け入れる
学校に行きたくない「理由」を受け入れる
「どうして学校に行けないの?」と子どもや周りの人を責めたり、他の子と比較するなどに意識が向きがちですが、ますます悪化してしまいます。
学校に行けない=ダメな人間なんだ
という自身の考えを変えましょう。
親はどうしても学校に行かせるための解決策を考えがちですが、親の望むこと=解決策ではないのです。
子どもが笑顔で過ごせるようになるには、子どものありのままを受け入れて、自己肯定感を持たせましょう。
「学校に行きたくない」を一度はその気持ちを受け止めて、いつでも子どもの味方であることを伝えましょう。
決して子どもの言いなりになっているわけではありません。
自分を受け止めてもらったと分かると、ケロッと登校しはじめる時もあります。
ここで、親が子どもから自立することがとても重要です。
冷静に、一歩引いて子どもを見守りましょう。
子どもに自分で考え、判断させてみてください。
我が家の場合:
「回復期」に入り、保健室登校なら校門まで付き添って、バイバイできるようになった日、明日こそは一人で行ける!と信じる事にしました。
前日に私は決意して
「明日からお母さん一緒に学校行くのやめにするね。一人で家から登校しようね」と息子に伝えました。
息子は「うん」と頼りない返事をしました。
翌朝、「行ってらっしゃい~!」と笑顔で送り出し、玄関の鍵をガチャと閉めました。
案の定、息子は帰って来てしまったのですが、私はドアを少しだけ開けて、「大丈夫だよ行ってきな!」と声をかけ、またドアのカギをしっかり、締めました。
その時は胸が締めつけられ、息子がどこかで座り込んでいないかなど、グルグル不安がよぎりました。
しかし、なんとこの日を境に息子は「自分で」登校できるようになったのです!
2-1.1 勘違いしないで!親が間違うポイント
①「無理やりでも行かせる。」
「もっとがんばれば行けるようになるよ。」
「こうしなさい。」
→子どもを抑圧的に無理やり登校させると、がんばっても行けない自分がいるので心理状態が悪化してしまう恐れがあります。
さらには子どもは自分が愛されていないのではないかと感じ、何に対しても自信が持てなくなってしまい、自己肯定感が育たなくなってしまいます。
②「お母さんがずっとついて行ってあげるから」
→親が過保護・過干渉してしまうと、
母「私がいないと、子どもが学校に行けない」
子「お母さんがいないと、学校に行けない」
と共依存の状態になってしまいます。
親はつい、きずついた子どもを守ろうと、細心の注意を払い、先回りして不安を取り除き、子どものために精一杯がんばっています。
けれども、自分がこれだけやっているのに・・良くならない
と考えていませんか。
実はこの考えが余計に子どもの自立性を阻んでしまってるのです。
子どもの自立のために、少し見放す事も大切です。
その代わり、上手くできた時には充分な愛で包んであげましょう。
我が家の場合:
子どもが登校してくれるのなら、できるすべての事をやろうと意気込んでしまいました。
息子が教室に入れないなら一緒に入る。
不安なら授業も一緒にいてあげる・・・。
しかしこの状態がずっと続き、私は「自由な時間」がなくなりました。
息子は私がいれば授業は受けられましたが、少しでも帰るそぶりを見せると暴れ、母子共に不安定な状態に陥ってしまいました。
2-2.人間関係と環境の変化
不登校克服のキッカケで親の意識の他にもう一つ大事な点があります。
それが人間関係と環境の変化です。
友だちからのいじめがきっかけなら、その友だちから距離を置く。
先生が怖くて学校に行けないのなら、ホームスクールや家庭教師に変えてみる。
というように原因となっている人物がわかるのであれば、その人にできるだけ会わないようにしてあげる事が大切です。
原因がわからない場合でも、学校ではなくフリースクールに通ってみたり、外出できるようだったら小旅行に出かけてみるなど、環境を変えることで子どもの意識がいい方向に変わっていく可能性もあります。
我が家の場合:
とにかく「学校」という環境に置かれたくなかったのに、その「学校」に行かせようとしていたのが、いけなかったと後から思います。
ただ、休日は子どもが過ごす環境を「外」にして、学校の事を考えさせないようにしました。
外で遊ぶのは大好きなので、週末外遊びは存分にして気分転換をしていました。
又、私の勤務先に息子を連れてゆき、会社を外から見てもらったり、状況を良く知る同僚とたわいのない話をしてもらった時は息子もうれしそうでした。
この時、私自身も同僚に共感してもらい、心底救われた気持ちになったのを覚えています。
人間関係でいうと、はっきりとは分かりませんが、どうやら担任の先生とあまり気が合わない様子でした。
引っ越しのおかげで、環境と人間関係はおおきく変わりましたが、「学校で授業を受ける」というのは変わらなかったので、私が期待するほど息子は変わりませんでした。
2-3.親が自分の人生を楽しむこと
愛するわが子が、不登校になってしまったら、親は自分をかえりみず、どんなことでもやってのけようと努力してしまうことがあるのです。
その結果、親はエネルギーをつかいはたし、子どもは息苦しくなるという悪循環になってしまいます。
お父さん・お母さんは、自分の子どもを愛する分と同じ分、自分自身を愛して、自分を最優先に考えてみてください。
親が人生を楽しんでいると、子どもはその変化にいち早く気がつきます。
子どもの気もちが変わると、子どもの行動も変わってきます。
努力はいりません。親は人生を楽しめばいいのです。
我が家の場合:
私がこのことに気が付いたのは、実は息子が不登校を克服した後でした。
気が付いたら、私は、自分のやりたい事に気持ちが向いていた、というのが正しいです。
長い会社勤めから、夫の転勤による退職、そして一人で事業を始めたため、開業の手続きなどで子どもへの関心がいい意味で分散していったのかもしれません。
そして、最後は息子を信じたこと。
息子の自立のために、家に戻ってきた息子を少し見放す事ができて、玄関のカギを閉めたことです。
3.逆戻りしてしまったら。。?
不登校の子どもは、心のエネルギーをかなり使っています。
少し改善の兆しが見られても、焦らず見守ってあげてください。
不登校に逆戻りする事はよくあるのです。
一度行けたんだから、また行けるようになるよね。と期待してしまいます。
「学校に行く」ことがゴール、全ての解決ではなく、子どもが幸せに、元気になってもらう事が本来望んでいることですよね。
我が家のケース:
改善の兆しが見られた頃、
「学校楽しみ!」と行って玄関を出たものの、やはり学校が近づくに連れて足が止まり、
「どうして?さっきは楽しみって言ったじゃん!」と私も必死になって説得にあたっていました。
息子は学校に行きたい気持ちはとっても強かったんだと思います。
けれども体が動かない。なぜかわからない。
という状態に私も一緒になって考えてしまいました。
けれども不登校の原因はテストの模範回答のようにきれいに出るものではない、ましては親のがんばりに比例するものでもないという事に気が付きました。
子どもがどんな状態であっても、受け入れているよと伝え、
子供が自立できるようにほんの少しだけ親が勇気を出す事が出来たら、変われるんだと思います。
4.まとめ
子どもが不登校になった際、親は「まず原因をつきとめて対処しなければ!」と考えるのではないかと思います。
もちろん、原因となる人間関係や環境が明らかなのであれば、まずそこから離れたり、抜けだしてみてください。
けれども、原因が分からなくても心配いりません。
結局、私の息子が不登校になった原因は、最後まで分かりませんでした。
今では「あの時はどういう気もちだったの?」なんて会話もできるようになりましたが、息子はキョトンとした顔で「うーん。わからない。」と言っています。
不登校になったら、まずお子さんの話を充分聴いてあげましょう。
助言するのは10%くらいで、90%は子どもに話をさせてあげてくださいね。
そして、色々な人とふれ合うことは時に傷つくことがあったりして、なかなか行動にうつせない時もあるかもしれません。
子どもが今4つのステップのどの時期にいるのか、外部の世界に興味がわいてきたときに、いい人にめぐり会えたらいいですね。
最後に
何よりも、お父さん・お母さんが笑顔を忘れがちなので、まずは自分がしたいことを、存分に、やってください。
不登校の渦中にいると、長い長いトンネルの中でもがいている自分にいったい何ができるのか?と思うかもしれません。
そういう時は無理やりでも、仕事に専念してみる、週一回の料理教室に通う、趣味を再開するなど、別の環境に身をおいてしまいましょう。
罪悪感を感じる必要はありません。
お父さん・お母さんが楽しく夢中になっている姿が起点となって、お子さんが変わっていけるのですから。